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書籍情報と書評

2015.12.12.更新

-BOOKS-
<このコ−ナ−では、東京製本倶楽部会員の著作・出版物、ならびに会報掲載の書評を短縮して紹介しています>
<2004年以前の出版物については、書名と販売情報のみ記載しています>

2007年 2006年
2005年
2004年
2003年
2002年以前




17世紀オランダで書かれた「製本作業ノート」の未綴じ本

 東京製本倶楽部HP宛てにDirck de Bray “A SHORT INSTRUCTION IN THE BINDING OF BOOKS”、1658年にオランダで書かれた「製本作業ノート」未綴じ本出版の情報提供があった。オランダの製本職人Brayが書き残したイラスト入りの製本作業ノートである。当時の製本作業や使われた道具について細やかに書かれた手書きのノートで、特に15葉のカラーイラストが貴重である。1977年にこの本のオランダ語/英語の二か国語翻刻版が出版されており、ノートは約9cm×8cmのオリジナルのサイズのファクシミリ版で、翻刻版は16,5cm×10,5cm縦長の大きさの良質の紙で出版された。

今回紹介するのは2012年に出版された新版である。やはりオランダ語/英語の二か国語翻刻版だが16,5cm×23,5cmの横長判型である。見開き左側に翻刻テキストが、右側にノートとイラストの印影が印刷されている。1977年版の編者とも協議して、訳の改良を加えたと言う。500部限定で出版されたが、現在は未綴じ本のみが入手可能である。1冊39ユーロ。支払いは銀行振り込みまたはPaypalを利用できる。
以下のサイトで本の中身を確認することができる。
http://www.ganzenweide.nl/Home/De_Bray_in_English_files/De%20Bray%20LowRes.pdf

出版の詳細や注文・購入については以下のサイトを参照して欲しい。

http://www.ganzenweide.nl/Home/De_Bray_in_English.html 



フランスから新たな現代ルリユール作品集刊行
 フランスのEdition FatonsからYves Peyré “ Histoire de la reliure de création”が出版された。「創造的ルリユールの歴史」というタイトルの本書は、パリのサント・ジュヌヴィエヴ図書館がこれまでに収集した19世紀以降の代表的なルリユール作品450点以上がカラー印刷で収録されている。ほとんどの作品がこれまでのカタログや出版物に掲載されておらず、表紙だけではなく見返しを撮影した写真が多いのが特徴である。フランスに限らず諸外国の製本家の作品が紹介されており、東京製本倶楽部代表・藤井敬子さんの作品も掲載されている。

 「19世紀から20世紀への転換点で新たな工芸:創造的ルリユールまたは製本工芸が生まれた。ルリユールは単なる職人仕事ではなく、前衛的リズムでの旺盛な想像力の場となってアート・シーンへ足跡を残した。ジャポニスムからアール・ヌーボー、アール・デコから機能主義、シュルレアリスムから構成主義、1980年代のミニマリズムやバロック的傾向などあらゆる実験に適応し、時には建築との驚くべき平行性を織りなしている。」(出版社パンフレットから)
 360ページ。30cm×23cm。上製本。布装、ジャケット。49ユーロ。詳細および購入は以下のサイトから出来る。

http://www.faton-beaux-livres.com/livre/histoire-reliure-creation-collection-b-s-g.4198.php

(以上2点、岡本)



内田嘉吉文庫修復に関する展示パンフレット

千代田Web図書館の「コレクション」に『内田嘉吉文庫の修復報告』が収録されました。
修復後の本も特別研究室でご覧いただけます。

「100年後も手に取れる本に 〜内田嘉吉文庫修復報告〜」展示解説パンフレット
著者 日比谷図書文化館特別研究室
出版社 日比谷図書文化館
発行日 2015.06  図書タイプ PDF
https://weblibrary-chiyoda.com/

内田嘉吉文庫をはじめ、旧一橋図書館本、明治期以前の和本など約20000冊の図書を活用した、
展示やセミナーなどの活動がまとめられた特別研究室サイトページからもダウンロードできます。

http://hibiyal.jp/hibiya/labo/tokubetukenkyusitsu-main.html

(藤井)

『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている
再生・日本製紙石巻工場』

佐々涼子 著 早川書房 2014

3年前の3月、紙が足りないと騒がれていたことを覚えていますか?東日本大震災で、日本の出版用紙の約4割を担う日本製紙の主力工場である石巻工場が壊滅的被害にあったのがその理由でした。本書は、その日本製紙石巻工場の再生までの道のりを描いたドキュメンタリーです。
話は地震当日と直後の混乱した状況、誰もが「工場は死んだ」と思ったという工場の被害状況に始まります。そして読んでいる今でさえ無謀と思える「半年復興」に向けてそれぞれの持ち場で黙々と働いた従業員の姿が描かれ、工場再生の象徴となる8号抄紙機の初稼働へとつながります。語られた従業員の言葉からは、直面した困難や苦悩、さまざまな葛藤や悔しさなどが滲み出ます。そして同時に、自分たちが本の紙を造っている、日本の出版界を支えている、という職人としての矜持が感じられます。
本への関心が高い倶楽部会員の皆さんの中でも、それほど多くの紙が石巻で作られていることを震災で初めて知った方も多いのではないでしょうか?恥ずかしながら私もその一人です。もっと言えば、毎日本を手にしていながら、本の紙がどこで作られているかを考えてみたことすらありませんでした。だからこそ、この再生の物語は読んでおきたいと思いました。
本書に使用された紙はすべて石巻工場で作られたもので、巻末には使用された紙が記載されています。また、当面は電子化の予定は無いそうです。ぜひ、石巻工場8号抄紙機で作られた本文用紙の手触りを感じ、その紙に関わった土地や人々に思いを馳せつつお読み下さい。石巻で職人達によって「つなげ」られた紙への思いは、きっと読者の手や心にもつながっていると感じられることでしょう。
なお、本書の売上の3%は、石巻市の小学校の図書購入費として寄付されるとのことです。
(佐藤)


貴田 庄『西洋の書物工房』 朝日新聞出版

2014年2月、四六判ソフトカバー、243頁+15頁、1400円+税

2000年に芳賀書店から出版されたが、「あとがき」によれば初版800部、増刷350部が刊行されたのみで絶版となった。
最近では古書価が出版時の定価の3倍ほどになっていたと聞く。入手しにくかった本が朝日選書の一冊として装い新たに
出版された。西洋の製本について歴史的、理論的にきちんと解説した日本で最初の本である。
著者は映画関係の著述で知られているが、1970年代末にパリとブリュッセルで本格的にルリユールを学んで帰国した。
マーブル紙作家としても知られている。実際に手を動かして制作する作家らしく製本をモノとしてとらえる視点は現在でも
とても参考になる。本を構成している紙や革、金箔、などの材料の歴史や特性を詳しく解説し、小口装飾やはなぎれ、
見返しなどについての論考は読んでいて実に楽しい。豊富な写真と図版が読む人を飽きさせない。
旧版はB5の大きな本でゆったりとした組版で読みやすかったが持ち運びには不便だった。今回は四六判と
小さくなったがあまり窮屈さを感じない。むしろ、どこにでも持ち運びしやすく、片手でページを繰る事が出来て、
気軽に読めるのは大歓迎である。製本についてもっと深く知ることの出来る一冊である。電子版もある。

ランバロス・ジャー 市川恵里 訳『水の生きもの』 河出書房新社

2013年10月、B4変形(235×370ミリ) ハードカバー、化粧函入り、28ページ、シリアル・ナンバー入り、3990円+税

とてもうつくしい本である。インド東部ビハール州に伝わるという民族絵画の一種ミティーラ画の絵本。
まず大きさにびっくりする。函から出すと横長の本だが表紙とページを上方向にめくる。
表紙見返しの色と線の鮮やかさが普通じゃない。そっと触るとインクの凹凸を指の下に感じる。
そして絵本のページはインドの手漉き紙にインドのシルクスクリーン工房で作られたオリジナル版画である。
手漉き紙と印刷インクの匂いが鼻を刺激する。しかし絵を構成する線の鮮やかさは、オフセット印刷では
出すことのできないオリジナル版画ならではのものである。そして製本が手製本なのである。
よく見返しのノドのあたりをみつめると、2か所で3つ目綴じしてあるのが分かる。
3000部刊行のシリアルナンバー入り。
同じシリーズの『夜の木』(タムラ堂刊)の制作工程を捉えた動画がある。

http://www.youtube.com/watch?v=om6i3enGZ8c                                     

(以上2点、岡本)

堀米薫 『思い出をレスキューせよ!“記憶をつなぐ”被災地の紙本・書籍保存修復士』

くもん出版 2014年2月、四六判ハードカバー 112頁 1400円+税 

「東日本大震災を語り継ぐ物語」として、会員の金野聡子さんを主人公にした
児童向けノンフィクションが発行されました。
『おかえりプロジェクト』のお話も出てきます。

『楽しい豆本の作りかた』

ブックサイズ 天地210×左右200×厚さ10mm
著者 赤井都 http://kototsubo.com/

発行 学研パブリッシング
http://gakken-publishing.co.jp/
2013.11.26発売
本文80ページ オールカラー
ISBN 978-4058001677 本体価格 1,600 円

初心者から経験者まで、新しい発見がある本。
子どもから大人まで、心ときめく…
自由な発想で作れる「豆本」の魅力がこの一冊に!

中綴じ、折本、平綴じなど、製本ごとに8作品掲載。
外装の作り方だけでなく、内容の決め方も丁寧に解説。
作品の完成度が高まる「函」のつくり方も登場!

(赤 井 都)


書誌学の目的、書物の調べ方・取り扱い方
大沼晴暉『図書大概』
汲古書院 2012年11月、A5判上製函入、469頁、8000円+税  

書物にまつわるあらゆることを科学的に究めるのが、書誌学という学問である。  緻密で根気のいる作業を必要とするが、それがつまるところ何のためなのか、きちんと理解している研究者はどれほどいるだろうか。  大沼晴暉氏(元慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授)は、東洋古典籍の書誌学の第一人者である。昨年末、汲古書院から出版された『図書大概』を見ると、書誌学の手法とともに、その目的とするところが極めて明確に記されている。  書誌学(図書学)について説いた本は過去にも多々あるが、概して読みにくく理解が困難である。大沼氏の言うところがわかりやすいのは、氏が書誌学者であると同時に民具研究の専門家でもあり、書物の世界も民俗学の立場からとらえる視点があるからであろう。  書物の内容を比較精査して本文を整定すること(校勘学)と、手作業で書かれた写本の筆写状況から時代を鑑別したり、印刷発行された刊本の同版異版や「刊・印・修」を判別したりすること(形態書誌学)が、その主な作業になる。  本が初めて作られ印刷されて世に出るのが「刊」、その版を後日ふたたび流用して刷るのが「印」(刷)である。更に、誤記や誤植がみつかって、版のその部分を修正して刷ることを「修」という。  多くの人が読みたいと希望して人気の出た本は、版元が増刷を行う。場合によってはミスを訂正するなどして、初版初刷とは少し違う部分のある本が生まれる。あまり需要のない本は、印刷される回数も一度きりで終わってしまう。一方で、よく読まれたくさん売れる本は、間違いの修正だけでなく、判型を小さくしたりブックデザインを変更したりと、様々な趣向でリニューアルを加えて新たな読者を獲得し、ロングセラーとなっていく。これは昔の出版も現代の出版も同様である。  したがって、数多くの種類が存在する本というのは、それだけたくさんの人に望まれ読み継がれたものであり、文化的な需要度が高い存在であると言える。  出版物の刊印修を調べ、どれだけの異版があるか明らかにする書誌学的な作業は、こうした文化背景を浮き彫りにすることにつながる。 『図書大概』では、和漢の古典籍をその主な対象としている。和本の最も一般的な形である整版本(木版刷りで作られる書物)の製作手順や、錦絵製作工房の組織の構造、日本独特のものである「奥付」の発生経緯と現状、上方版と江戸版の違い、寺院出版など宗教書の類、そして地方出版まで、豊富な具体例を紹介するが、説明の際には『サザエさん』や電子書籍も登場、読者の理解を助けている。加えて、近代以降の出版物についても、活版や紙型といった印刷技法をふまえた解説がなされている。  長きにわたり議論されてきた『百万塔陀羅尼』の印刷技法についても言及がある。銅版を実際に作ってみた実験については「現在という時点からのアプローチの一つに過ぎず、それが全てであるとは限らない」とする。大沼氏は、膨大な量の印刷面を実際に検証してきた経験を背景として、木版説有力との感想を述べている。「版面・料紙・印刷インク(墨)・技術とも現今のものとは違うので、現在の知識から接近を計っても断層・懸隔があるからである」というコメントには含蓄がある。  製本形態を表す名称の混乱については、粘葉装・綴葉装・蝴蝶装(胡蝶装)の各種用語の使い方の混乱状況とその経緯を説明する段で、特に注目したいのは「蝴蝶装」についてである。折丁を糸でかがる綴葉装(櫛笥節男氏らの言う「大和綴」)を「胡蝶装」と呼ぶ人がかつて多かったが、大沼氏は「片面印刷若しくは片面書写の粘葉装のものだけに限定して使うべき」とする。ただし大沼氏は「蝴蝶装」と書いており、これは中国の古典籍を意識した用語であるとおぼしい。  現代人の日常では、和本などの貴重な古典籍の本物に直接触れることは難しい。そのため、こうした資料を取り扱う際にはどうすればいいのかも、知られていないのが実情である。いまや日本人であっても和本の本当の姿を見たことがない人のほうが多いわけで、当然といえば当然である。本書では、本を調べる手法が詳しく記されているが、同時に、本の取り扱い方、閲覧の心得が明記されているのも親切である。  悪天候の日は閲覧を決行すべきでないこと、書物を見る際に白手袋は使用すべきでないこと、シャープペンや消しゴムは使用しないほうがいいこと、本を持ち上げて見たり伏せたりしないことなど、心当たりがある研究者も多いに違いない。また蔵書保存の際、剥がれた題簽を貼り付ける際の接着剤は「生麩糊或いはせめて大和糊(どちらも薄めたもの)」がよいこと、ホチキスやクリップや輪ゴムの使用もやめるべきであることなどが、それぞれ納得できる理由とともに説明されている。 『図書大概』には、このように、書物に関わる仕事に携わる人たちにとって大変役立つ事柄、知って欲しい情報が潤沢に盛り込まれている。  汲古書院の出版物の常として、A5判上製函入という威容と、個人の財力では決心のいる販売価格が、本書の流布を阻むおそれがあるが、古典籍に興味のある方や書物を扱う業務に関わる方には特に、一人でも多くの人に読んでもらいたい本である。  敗戦後の物資不足の折、数々の貴重な書物が売り払われるなか、『甲陽軍艦』を壊して本文紙をトイレットペーパーに使った人のエピソードが出てくる。「何しろ君こんなにあるんだから」と言って、その人は『甲陽軍艦』全冊を積んだ嵩を手で示したという。大沼氏は書く、「こうして人災・天災によってどれほどの書物が失われたであろうか。しかしまた同時にその書物を護り、現在に伝えたのもその同じヒトなのだ。まさに守るも人、滅すも人と云ってよい」。名言と言うほかない。                                    (田中栞・記)


「本の歴史文化図鑑」マーティン・ライアンズ著 蔵持不三也監訳

柊風舎 2012年5月刊 26cm 9500円(税別)

原題は、"Books, a living history" だが、ビジュアル版の歴史文化図鑑シリーズとして出版されている。
大判の本の見開きにエピソードが羅列してあるので読みやすい。(場合により3ページにわたる)図版はほとんどカラーで美しい。
例えば、アリストテレス作らしい『アテナイの国制』のカラー画像は私は初めて見るもの 古代から現代まで、日本のマンガやデジタル(キンドル)まで目配りが利いている。
ただ、「日本の蛇腹式本と『源氏物語』」というエピソードはどうだろう。源氏物語の基本の形は折り本だったのだろうか。それも「蛇腹」と呼ぶのだろうか。
また最古の印刷巻物、敦煌出土の『金剛般若教』の長さが488メートルとは?(p10) 日本の国宝の金剛般若波羅蜜経は593cmである。
好意的な書評に、紀田順一郎氏のサイトでの紹介がある。
http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2012/051801/index.html

(河本)


Don Etherington, Bookbinding & Conservation: A Sixty-Year Odyssey of Art and Craft
Oak Knoll Press 2010年刊 英語 ハードカバー 156頁

 英国に生まれ、のちに米国で書籍・紙資料の保存修復の専門家および製本家として活躍したドン・エザリントンの自伝が、カラー写真多数を含む大型本として昨年刊行された。
エザリントンは『製本と書籍修復に関する用語辞典(Bookbinding and Conservation of Books: A Dictionary of Descriptive Terminology)』(現在は電子版がウェブ上で公開されている)の共著者としても名高い。
 1935年、ロンドンに生まれたエザリントンは、13歳のときにセントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツで製本を習いはじめ、16歳から7年間の徒弟奉公契約を結び、大手印刷会社の製本部門で働いた。途中2年の兵役を挟み、23歳で一人前の製本家として独立。1960年から2年ほど英国有数の書籍修復家ロジャー・パウエルとピーター・ウォーターズの工房の助手として働く一方、美術系の大学で製本を教えはじめる。彼の人生の転機となったのは、1966年フィレンツェ大洪水の際に、世界各地から駆けつけた専門家とともに大量の被災資料の保存修復活動に参加したことだった。
 1970年に家族とともに渡米、ウォーターズらと米国議会図書館の保存修復部門の立ち上げに携わり、フィレンツェ大洪水の経験を生かした新たな手法として保存箱の導入を提唱、従来のラミネート加工に代わるポリエステルフィルム封入法の開発にも手を貸した。1980年からはテキサス大学ハリー・ランソム・ヒューマニティーズ・リサーチセンターに移り、保存修復部門の設立に参加。1987年からは図書館製本会社インフォメーション・コンサヴェーション社に加わり、保存修復工房を創設(のちのエザリントン・コンサヴェーション・センター)。米国内のみならず、世界各地でさまざまな歴史的文書や貴重書の保存修復活動に従事してきた。2005年、70歳でエザリントン・コンサヴェーション・センターを離れたあとも、学校やワークショップなどで製本と書籍の保存修復について教えつづけた。
 バーナード・ミドルトンの Recollections: A Life in Bookbinding(2000)と並び、きわめて珍しい「製本家の自伝」の1冊である(ちなみにミドルトンはエザリントンの盟友でもあり、本書に序文をよせている)。エザリントンは本書の中で60年におよぶ製本家人生を淡々とふりかえっているが、英国の伝統的な徒弟制度のありようや、フィレンツェ大洪水後の資料救出活動の様子、数々の貴重資料の修復作業の実際などが経験者の目で語られているのはたいへん興味深い。また、渡米後、議会図書館を皮切りに、各地で次々に現代的な保存修復プログラムを立ち上げ、発展させ、大勢の人を育てていくさまは、米国の書籍修復保存活動の歴史そのものと重なって読める。その八面六臂の活躍ぶりには敬意を覚えずにはいられない。仕事に関する記述が大半を占めるなかで、時おり挟まれる私生活の話は平凡でさほど面白いものではないが、52歳のときにカナダの製本家モニク・ラリエと出会ってひとめで恋に落ち、互いに離婚して結婚するに至るくだりは、唯一ドラマチックなエピソードであり、何ともほほえましい。巻末にはエザリントンがみずからのデザインで制作したルリユール作品50点あまりが1頁1点のカラー図版で収録され、優れた製本家としての側面を伝えている。
(市川恵里)


「雑貨屋さんの製本教室」
著:西川順子・齋藤珠美 出版社:雷鳥社 定価:1,680円 雷鳥社

青森市の雑貨店Gigiで行われているワークショップから
1冊 の本が生まれました。

貼り合わせ製本やハードカバーのつくりかたから始まって、
手製本 の技法を用いて気軽につくる作品を計10点紹介しています。
そして、制作手順写真以外の全ての掲載写真の撮影も担当した
Gigi店主の齋藤珠美さんが、本や紙の魅力をあれこれ綴っています。

雷鳥社 http://www.raichosha.co.jp/

雑貨店Gigi http://blog.gigi.shop-pro.jp/

西川順子 http://www.junkonishikawa.com/

(西川)


『そのまま豆本』赤井都
2010年9月16日発売 ISBN 978-4-309-27206-1  1470円(本体価格1400円) 河出書房新社 

 河出書房新社から、『豆本づくりのいろは』に引き続き、二冊目の「豆本の本」が 出ました。『その まま豆本』というタイトルのとおり、本を切り取ってそのまま豆 本を作ることができるキット集です。 本好きは「本がなくなってしまう」と困った 顔にもなるけれど、実物の本の展開図を見られ、しかも組 み立てれば完成品になり ます。本から本が生まれる楽しみを、17種類ぶん、たっぷりと味わえます。
 初心者でも作れる本にしようと、綴じは中綴じ(三つ目綴じ)と和綴じのみで、シ ンプルに糸で綴じ ます。この他に折本が加わり、あとはデザインと中身でバリエー ションを出しています。
 たとえば『いろはにほへと』は、明治時代の教科書から拾った木版文字と、描き下 ろしのとてもかわ いいイラストが一緒になった和綴じ豆本です。背表紙がつながっ ていて二方向から開くアートブック『 春の歌・秋の歌』の表紙には、古書店で購入 した図案集から、和の伝統文様を取りました。中身は花の 写真と「古今和歌集」。 他にもティーバッグ型フランス装豆本、丸いビスケット型折本、NASAの星雲写 真を 使ったサイコロ型折本、ルドゥーテの花の画が入った継表紙風豆本、賢治の『やまな し』を上下巻 で全文収録しスリップケースに収める豆文庫など。一番小さな本は7mm 四方の清少納言『うつくしきも の』。豆本とはいえ、中身はしっかりと詰まってい ます。イラストを依頼したり、ふつうに本を作るの と同じような手間を一冊ずつに かけました。  「豆本はせせこまくて美しいと思えない」とさる人から聞いたことがあります。そ こで、本の版面は ヤン・チヒョルトを参考に、見開きページの対角線に作図して余 白を多く取り、本の縦横比は整数比や 黄金比で美しいシルエットにしました。  本を包む函も、スリップケース、筒型、夫婦箱型トランク、たとう、雲形帙のアレ ンジなど、さまざ まな形のものをつけ、「簡単だけれど本格派の出来になる」とこ ろを目指しました。

『そのまま豆本』2010年9月16日発売 ISBN 978-4-309-27206-1  1470円(本体価格1400円) 河出書房新社  http://www.kawade.co.jp/ 赤井都  http://miyako.cool.ne.jp/kototsubo/


林 由紀子 銅版蔵書票集 『プシュケの震える翅』発刊のご案内

蔵書票職人を自任する林由紀子さんがこれまで制作した104点の蔵書票をまとめた
カタログレゾネ『プシュケの震える翅』を、レイミア プレスから発刊することになりました。

1.普及版 A4判上製丸背本、硬質ビニールカバー装、本文糸かがり綴じ、カラー32頁、モノクロ64頁、印刷見返し
掲載蔵書票図版カラー20点、モノクロ104点、蔵書票以外のカット7点(すべて本書のための描き下ろし)を収載。
見返しに著者による装飾画を印刷するほか、本文のほぼ全頁に著者による装飾枠を印刷。蔵書票リスト、票主索引完備。
すべての記事について、英文を併載。 発行部数:1000部(製本900部、未綴じ本100部)
頒布価格:定価3,800円(税別、送料別途実費) 発行年月日:2010年7月1日
頒布方法:版元直販のほか、個展会場・都内一部書店・画廊等にて委託販売

2.限定特装版 A4判クロス表紙上製丸背本、グラシン紙覆い、夫婦函入り、本文糸かがり綴じ、カラー40頁、モノクロ64頁、印刷見返し、
表紙と裏表紙には、著者による装飾画を全面金箔押し、夫婦函のひらと背には、書名・作家名・出版社名を金箔押し
普及版 の内容に加えて、・「儚いものの記録?花の素描集」(カラー8頁、素描9点)を収載:図版を参照
・新作蔵書票オリジナル手彩色10点(署名・タイトル入り)貼り込み:図版を参照
・署名、限定番号入り・奥附に、著者画による検印紙貼り込み
希望者には、巻頭の印刷蔵書票に、所蔵者の氏名を作家が直筆記名
発行部数:50部 頒布価格:定価6万円(税別、送料別途実費) 頒布時期:2010年7月末予定
頒布方法:版元直販のみ

江副 章之介 レイミア プレス e-mail:lamia_press@yahoo.co.jp(@を半角にしてください)


『西洋挿絵見聞録 製本・挿絵・蔵書票』 気谷誠

税込価格:3,990円 出版 : アーツアンドクラフツ ISBN : 978-4-901592-55-0 発行年月 : 2009.11

ルネサンス期のイタリック体で造られた小型本から、総革装に幾何学模様・金箔押しのグロリエの装丁本、 ロココ時代の艶笑本挿絵、
ベル・エポック期に海に沈没した宝石本など、西洋の挿絵・製本・蔵書票のエピソードを綴る。
http://www.webarts.co.jp/book/book_052.htm

(谷口)

気谷誠追悼―遺著『西洋挿絵見聞録』を読みながら

 気谷誠は、おそらく徹底して「書物の人」だったのだと思う。その彼が人生の最期を迎えた時に耳傾けた音楽が、静かで甘美な夢を醸し出す世界だったというのは象徴的なことだ。彼はやはり、最期まで「静かな」男だった。
 私事で恐縮だが、私自身は父親が舞踊家だったということもあって、毎日、朝から晩まで音楽が鳴り響いている家庭で育った。だから、騒々しい中で何事も行うのが当たり前で、静まり返った場所では落ち着いて本が読めない人間に育ってしまった。学生時代から図書館では落ち着いて本が読めなかった。いっぱしの文学青年だった学生時代には、喫茶店で音楽を聴きながらでなければ小説が書けなかった。――気谷誠は、いったいどんな家庭で育ち、どんな生活をして青春時代を過ごしたのだろうか? とうとう一度も聞くことのないまま、彼はあちらの世界に行ってしまった。私は、彼が最期の日々を綴ったブログで触れている音楽を聴いて、そのイメージしているものが、少しだけわかったように思う。彼は、静かな午後、カーテン越しに暖かな日差しが差し込む書斎で、ひとり静かに読書をするのが、とても似合う男なのだと思う。
 気谷とはその博識な会話がおもしろくて、時折、機会があれば会っていたが、今思い出してみると、彼の話題はいつも、その背後に「文献」への飽くことない関心が横たわっていたように思う。日常の生活、あるいは心の大半を、けたたましくも騒がしくもある音楽を周りに置いている私とは、おそらく対岸にいたのだと思う。だからこそ、音楽談義は一度始めると、なかなか終わらなかった。私にとっての一番の思い出は、もう二〇年ほども前、私が当時住んでいたマンションに来て、私のレコードコレクションを聴きながら話がはずみ、すっかり夜が更けて、結局、私の仕事部屋で一晩過ごしてしまった時のことだ。彼は、「こんなに音楽のことを話したのは久しぶりだ」と言っていた。
 気谷からは、「コレクターは、自分のコレクションについて語る義務がある」ということを教わった。大切な言葉である。それがあればこそ、音楽研究家として、数冊の本を上梓することができた、と今でも感謝している。その気谷誠が、様々の書物について触れた労作が、やっと一冊の書にまとまった。『西洋挿絵見聞録』(アーツアンドクラフツ社)がそれである。彼の書物に関する好奇心と博識ぶり、そして溢れるほどの愛情が満載の書をまとめた編集者は村山守氏。彼もまた、気谷の遺した原稿に愛情を注いでこの書をまとめていると感じた。それは書籍編集者として数百冊の書籍を世に送り出してきた私をして、久しぶりに、その対象への細やかな配慮が見え隠れする仕事に羨望を禁じ得なかったからだ。

 「気谷誠」という類まれな人物の、あの独特の飄々とした語り口を私たちが永遠に忘れないための、大切な一冊である。

(竹内貴久雄)


『手で作る小さな本 豆本づくりのいろは』
著者:赤井都

出版社:河出書房新社 発売日:2009年11月下旬
価格:1,680円(本体1,600円) ISBN:978-4-309-27143-9 造本:B5変形 96ページ オールカラー


内容:初心者でも楽しめるシンプルな作りの豆本から、本格派も満足させる糸綴じのハードカバーや革表紙の豆本、
和綴じの豆本など10種類の作り方を紹介。「手作り豆本図鑑」含む。見ているだけで楽しい、豆本好き必携の書です。
http://miyako.cool.ne.jp/kototsubo/index.html
(編集室)


川上裕司・杉山真紀子著『博物館・美術館の生物学 カビ・害虫対策のためのIPMの実践』

雄山閣 2009年8月 B5版上製 174頁 定価4,200円(本体4,000円+税)

第1章 カビの基礎知識と検査法 /第2章 昆虫およびダニの基礎知識と検査法/ 第3章 IPMとは? /第4章 カビ・害虫対策-IPMの実践- 
/第5章 薬剤による対策 /第6章 物理的な対策-薬剤以外の方法- /第7章 IPMに適した建築的対策 /参考文献 /索引
著者川上裕司の職場・エフシージーのサイト「IPM美術品・文化財保存サポートサービス」ページ
http://www.fcg-r.co.jp/ipm/index.html の最下段「関連書籍のご紹介」から
10月末日まで特別割引3,400円の申込書をPDFファイルでダウンロードできる。
(岡本)

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田中栞『書肆ユリイカの本』

青土社、2009年9月1日発行、定価2520円(税込)
A5判丸背上製(糸かがり)ジャケット装、本文・カラー4頁+モノクロ270頁(図版370点掲載)

戦後すぐの時代にあった「書肆ユリイカ」は、伊達得夫という名編集者が、たった一人で本づくりを手 がけていた。その出発点は原口統三の『二十歳のエチュード』(昭和23年2月)で、これはベストセラー になった。その後、伊達は無名の詩人たちを発掘しては、次々と詩書を世に送り出した。中村稔、飯島 耕一、辻井喬、平林敏彦、岸田衿子、石垣りんなど、名だたる詩人の処女詩集がみな、この書肆ユリ イカから出版されている。 伊達はまた高い美的センスを備えた人で、そのために書肆ユリイカの本は、造本デザイン上も美しいも のが大変多い。 本書では、伊達得夫の書物制作の手法を掘り下げて豊富な図版とともに紹介、美書の条件を徹底分析す る。また、書肆ユリイカの本の実物に触れてみたい人のために、国立国会図書館をはじめ、神奈川近代 文学館、日本近代文学館などに所蔵されるコレクションを紹介、特に、文学館には著者の署名や献辞 の入った本が数多く所蔵されており、愛書家にはたまらない蔵書群である。 さらに、書肆ユリイカの本に数多く存在する異版や異装本の実物を、書誌学的見地からつぶさに調べ、 関係者の証言を得ることで、実際の出版状況がどうだったのかを考察していく。 最終章は、書肆ユリイカの本に魅せられ、買い続けて10年の著者が、次第にのめり込んでいくその軌跡 を、余すところなく綴った古書買いエッセイ。 詩や詩人についての文学的紹介や評論は排し、全編、書肆ユリイカの本を「書物そのもの」の観点か らアプローチして、 その魅力を描き出そうと試みた一冊である。 田中栞オリジナル銅版蔵書票1点貼込み・署名落款印入本を購入希望の方は 、 「『書肆ユリイカの本』を購入希望」として「ご住所、お電話番号、お名前(フルネーム)」を明記の上、 田中栞へお申し込み下さい(定価+送料でお送りします)。なお今回、未綴じ本の販売はありません。
*田中栞メール koubaido@cam.hi-ho.ne.jp


はじめての手製本  製本屋さんが教える本のつくりかた
2009年5月1日発行 著者 美篶堂 発行 株式会社美術出版社

美篶堂の『はじめての手製本』(美術出版社、2009年5月1日発行)が出た。「製本屋さんが教える本のつくりかた」という副題がつき、ハードカバーノートやアルバムの作り方が載っている。やさしい雰囲気の紙面や、いとも簡単そうに見えるプロセス写真に、思わず手に取ってしまう初心者もいるかもしれない。職人の手仕事はいかにもたやすく見えてしまうものだが、選ばれた道具と手とスピード感があって初めて成り立つもの。美篶堂のワークショップを見たことがあるが、表紙ばりはほんの一瞬で、目にも止まらぬ早業だった。六人程度のワークショップで、講師のほかにアシスタントが二人ついていた。素人が簡単にまねできれば、職人はいらないことになる。ここで紹介されている手法は、板紙ではなく、布や紙に糊を全面に入れて一気にくるむやり方で、初心者がまねしようとすると紙がくるくる巻いたり皺がよったりして、材料を一瞬でだめにすることもあるかもしれない。本文を読めば何度も「良質のステーショナリー」という言葉が出てくることに気づく。ノートの材料には万一の場合にも換わりがあるだろうが、大切な一点ものを初心者が一人で仕立てるには危なさを感じる。美篶堂のワークショップでは2時間半で角背上製本を作り、定期コースはない。
 ばらばらの紙を綴じれば本になる。本書に紹介されている綴じ方法は、二つ折したページの折山をまとめて糊をつける、無線綴じ(断面にだけつけるということでは メモ用紙ブロックと変わらない方法)。プロセス写真だけ見て一人合点でそのへんの糊を使って糊綴すると、ほどなく、ばらばらに分解する物ができあがると思う。 工業製本と同じ糊でないと成り立たない手法だが、美篶堂ではこの業務仕様の糊を小分けして販売するショップも営んでいる。本書自体が、美篶堂の製本になるもので、 製本や糊の具合を実際に確かめることができる。
 また豆本の作り方プロセスでは、スティック糊が使われ、いかにも手軽にできそうだが、物体は弱い箇所から壊れるという性質があるので、構造部にスティック糊とボンドを併用した場合、スティック糊の部分から壊れると予想される。豆本はどこもかしこも全部が本の「ノド」だけのような物なので、無線綴には基本的には向かないものだと思う。
 『はじめての手製本』はむしろ、明治以後の日本の洋本製本の歴史を、伊那谷とお茶の水のみずみずしい風景を交えて美しく伝えるものとして受け止めたいと思う。100年前、それまで和本を作っていた職人が、明治に日本へ来た外国人から洋本製本の手ほどきを受け、それがさらに機械化の波に呑まれてゆく。機械に押されながら、手づくりを頑固に貫く父、その父の仕事をやわらかく新しく広げてゆく娘明子の静かな挑戦、それを取り巻くやさしい人々のストーリー。「伝統」「老舗」「正当の手製本」という言葉があるが、関山製本の社長と上島父娘、三代にわたる期間のことである。また美篶堂を創業した上島松男は独自に「あじろ綴」を考案した(cf.製本探索 デザイン製本 (2) 大貫伸樹:「あじろ綴はいつ頃から普及したのか」) 。
 明治期の洋本は、産業革命が手製本の世界にも工業化を促していた時代。この『はじめての手製本』で言う「手製本」は、日本の明治-現代の機械製本に対する手製本ということで、上島松男の甥はキャリア二十年で工場長になるまでの最初の十年間、ひたすら毎日紙を裁断することが修行だったという。 (2009.4.23 赤井都)


『本の手帳』第5号(田中栞企画編集・特集「豆本女子」
本の手帳社(田中栞・電話045-431-1260、 メール koubaido@cam.hi-ho.ne.jp
2008年6月、A5判64頁、定価1050円(税込


「豆本」というと、武井武雄や池田満寿夫などが手がけたような、コレクターズアイテムが思い浮かぶ方も多いだろうが、ここ数年は、こうした従来の
豆本とは異なり、若い女性たちが雑貨感覚で作る工夫に富んだ作品が増えている。2006年と2007年に、国際ミニチュアブック協会の豆本コンペティションで
日本人として初のグランプリを受賞(連続受賞)した赤井都をはじめとして、サイトで人気の岩波おれい ゆ、胡桃の椅子、武田若千、五十嵐彪太、久保鏡子など
個性的な創作豆本の女性アーティスト13名が、豆本への想いを綴る。最年少は中学3年生で、幼稚園時代に出会った豆本に魅せられ、小学校の夏休みの
自由課題に豆本を作って提出したという長野県在住女子。誌上製本ワークショップ「布表紙のハードカバー豆本を作る」(田中栞)もあり。豆本図版約300点掲載、
豆本好き必携の1冊である。 赤井都の革装手かがりオリジナル豆本『豆本十二ヵ月』がついた特装限定本(定価5250円+送料240円)もある。
(田中)


「中原中也詩集」限定本
戸田勝久氏による挿画入の限定本「中原中也詩集」
2007年5月アトリエ・アルド印刷刊行
本文レイアウト 松井淳子  挿絵 戸田勝久
挿絵画家署名入限定20部内記番1から5はオリジナル水彩画一葉添付
アトリエ・アルド atelier Alde : http ://www.atalde.jp/
問い合わせ 市田文子:aldereliure@yahoo.co.jp   

藤井敬子『お気に入りをとじる やさしい製本入門』
NHK趣味悠々テキスト


日本放送出版協会 2008年5月刊 AB判128頁 定価・本体1000円+税 ISBN 978-4-14-188467-5
折本から革装ライトステッチまで、オリジナル技法も含めて9つ紹介します。



会報 54号(2008年4月1日発行)より

The Penland Book of Handmade Books:
Master Classes in Bookmaking Techniques Lark Books 
2008年3月刊 英語 ペーパーバック 232頁 19.95ドル  
2004年にハードカバーで刊行された同名の本のペーパーバック版。米国ノースカロライナ州にあるペンランド・スクール・オブ・ クラフツでは手製本や紙漉きをはじめ、さまざまな手工芸のワークショップがおこなわれている。本書では、同校で講師を務めてき たブック・アーティスト10人(Daniel Essig, Eileen Wallace, Steve Miller, Carol Barton, Susan E. King, Hedi Kyle, Barbara Mauriello, Dolph Smith, Jim Croft, Julie Leonard)が、それぞれの作品づくりに使う技法を写真入りで具体的に説明し ているほか、作家たちが自らの仕事について語ったエッセイや、数多くの作家による多種多様な作品の写真も収録されている。伝統 的な形態の本よりも現代美術的なブック・アートの方が多いが、本づくりに応用できそうな数々のアイデアやヒントが詰まっている 。

Raymond Clemens and Timothy Graham
Introduction to Manuscript Studies Cornell University Press 
2008年2月刊 英語 302頁 85ドル(ハードカバー)/39.95ドル(ペーパーバック)
 初心者から研究者まで幅広い読者を対象にしたわかりやすい西洋中世写本研究の入門書。第1部「中世写本の制作」では書写材料 のつくり方から彩飾、製本、保管方法に至るまで写本の制作プロセスを詳しく説明、第2部「中世写本を読む」では中世写本を読む 上で必要なさまざまな知識について解説し、第3部「写本のジャンル」ではよく見られる写本のジャンルをいくつか挙げてそれぞれ に解説している。大型本でカラー図版も多い。                           (市川恵里)
REGARD(S) SUR LA RELIURE CONTEMPORAINE EN FRANCE 1980-2007
現代フランス製本展カタログ 144頁、画像171点 45ユーロ
今年の始めにパリ6区市役所にて開催されたARAフランス主催の展覧会。選考委員会によリ選ばれた
48人の製本家と79人の若手の 作品を網羅する。
申し込み:EDITION FATON 1 rue des Artisans BP90-21803 Qu?tigny CEDEX Fax 03 80 48 98 46 infos@faton.fr                                   (近藤)

会報52号(2007年12月1日発行)より
The Bonefolder 2007年秋号
http://www.philobiblon.com/bonefolder/vol4no1contents.htm
 

製本家とブック・アーティストのための電子ジャーナル The Bonefolder(英語)の2007年秋号が The Book Arts Web のサイトで公開された(PDFファイル)。今号もいくつか面白い記事が見られる。Collecting Artists' Books: One Librarian's Path From Angst to Enlightenment(by Ruth R. Rogers)は、アーティスト・ブックを収集する大学図書館特別コレクションの司書が、作品を選び、購入する際の基準を、自らの経験に基づいて具体的に述べ、アーティスト・ブックの評価のあり方について示唆に富んだ見解を披露した興味深い文章である。The Failure of Fine Printing(by Michael Russem)では、自ら主宰するプライヴェート・プレスで、村上春樹の短編小説を贅を凝らした挿絵入り限定本にしたブック・デザイナーが、その本を買った人がほとんど中身を読んでいないこと、そもそもコレクターは「読むために買っているわけではない」ことを知ってショックを受け、いかに豪華で美しくても読まれない本はデザインとして失敗しているのではないかと問題提起する。この文章は当初シカゴの愛書家団体 The Caxton Club の月報 Caxtonian に掲載されて賛否両論を巻き起こしたらしいが、「美しい本」のデザインと「読むものとしての本の機能」をめぐって考えさせられる問題を含んでいる。 そのほか、ラテン語版『ニュルンベルク年代記』ファクシミリ版の制作苦労話を綴った Creating a Facsimile Edition of the Nuremberg Chronicle(by Selim Nahas)、ギルド・オブ・ブック・ワーカーズ100周年記念展カタログを使った製本展の内容紹介など。 (市川恵里)


会報51号(2007年9月27日発行)より

Sacred Books of the Three Faiths: Judaism, Christianity, Islam The British Library 
2007年4月刊 英語 224頁 25ポンド(ハードカバー)/14.95ポンド(ペーパーバック) 2007年4月27日から9月23日まで、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれの聖典の貴重な写本多数を初めて一堂に展示する画期 的な展覧会 Sacred(聖なるもの)がロンドンの大英図書館ピアソン・ギャラリーで開かれていた。その図録である本書には、めっ たに目にする機会のないきわめて貴重でかつ美しい写本を中心に、印刷本、礼拝用の道具など計200点ほどの展示品のカラー図版と その解説が収められている。中東に生まれた三つの宗教の聖典がどのように書かれ、正典化され、各地に広がり、それぞれのやり方 で美しく装飾されていったかを探るなかで、各宗教の共通点と相違点、相互の影響関係などを明らかにするのが狙いであるが、書物 の歴史を学ぶ上でも、宗教と美術について考える上でも、この上なく興味深い資料ばかりである。冒頭にカレン・アームストロング 、エヴァレット・フォックス、F・E・ピータースの文章を収録。ジョン・リーヴ編。


Scot McKendrick and Kathleen Doyle Bible Manuscripts: 1400 Years of Scribes and Scripture The British Library 
2007年5月刊 英語 ハードカバー 160頁 20ポンド 2世紀のパピルス写本断片から16世紀ルネサンスの写本まで、1400年におよぶキリスト教聖書写本の歴史を、大英図書館所蔵の貴重 な写本140点以上を通じて視覚的に概観する本。 中東、小アジアからヨーロッパに至るさまざまな地域の、多様な様式、言語の写本が集められており、1ページ1点の大型カラー図 版に簡単な解説がついている。ユダヤ教の写本をテーマとする Hebrew Manuscripts: The Power of Script and Image、クルアーン 写本の歴史をたどる Qur'an Manuscripts: Calligraphy, Illumination, Design も今年大英図書館から刊行された。(市川恵里)

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Hideko Ise Sophie et le relieur
Seuil Jeunesse Collection : CREA.JEUNESS

2007年9月 フランス語 60 頁、15ユーロ ISBN-10: 2020961881, ISBN-13: 978-2020961882
「ルリユールおじさん」のフランス語版  
(河本)


LIENS, DE HIDEKO ISE いせひでこ原画展
10月10日まで 取材した工房があるパリ16区の区役所で
Salon du Vieux-Colombier, Main’e du 6eme arrondissement 78 rue Bonaparte 75006 Paris


会報50号(2007年8月1日発行)より

Elizabeth Morrison Beasts Factual & Fantastic The J. Paul Getty Museum
(ヨーロッパ版の版元は The British Museum)2007年5月刊 英語 ハードカバー 112頁 19.95ドル
ゲッティ美術館と大英図書館が共同で、中世彩飾写本の挿絵をテーマ別に紹介するシリーズ The Medieval Imagination(中世の想像力)の刊行をはじめた。両館が所蔵する中世から初期ルネサンスの写本コ レクションの中から、各巻のテーマにふさわしい写本挿絵を多数選んで解説を加え、西洋中世の人々の世界観とその芸術的表現を一般読者に楽しくわかりやすく伝えようとする入門書である。
第一弾となる本書『動物』では、中世人の生活に不可欠だったさまざまな家畜から、宗教的なシンボルとなった動物、写本欄外に描かれた怪物、ドラゴンやグリフィンなど想像上の生き物に至るまで、多種多様な 動物の絵が集められ、個々の絵にわかりやすい解説がついている。特に目新しいことが書いてあるわけではないが、単純に美しく見て楽しいオールカラーのビジュアル本に仕上がっている。著者のエリザベス・ モリソンはゲッティ美術館写本部門アソシエイト・キュレーター。このシリーズでは以後「ファッション」「肖像画」等のテーマが予定されている。 (市川恵里)


坂井えり 『デジタル技術と手製本』
印刷学会出版部 2007年3月 A6判上製185頁(デザイン製本シリーズ4) 定価・本体1600円+税
池袋コミュニティカレッジ・ルリユール工房で「私家版づくり」の講師を勤める著者が、パソコンを活用した本づくりの本格的な実践本として書き下ろした、待望の書である。
本文制作についての第2章では、PagemakerとWord2003を使っての作例が紹介されている。ソフトの進化は日進月歩なので、操作方法は必ずしもこの通りにはいかなくなるだろうが、ソフトの扱い方については 、その折々に、それぞれのマニュアルを見れば足りることである。
著者は書物制作全般において、栃折久美子氏の教えを時代に合わせて発展させており、「伝統的な編集技術には、それなりの合理性と審美眼の裏付けがあ」ることを常に踏まえている。著者が目指すのはそう した美と品格を備えた書物作品であり、本書も、パソコンを活用してはいるものの、決して単なるパソコンの技法書にはとどまらない。図版を見て作業方法を確認することも必要だが、本書は文字で記された部分 に、より心に響く記述が多いのだ。
用紙の目についてや見返しの処理方法などについては、仕上がりの美しさや本の強度に関わるし、布の裏打ちや本文紙の和紙での連結法は、様々な表現に活用できる有益な技術である。本文の組版レイア ウトにしても製本の細部での技法にしても、本書ではすべて「どのようにすれば、美しい(または、その本に相応しい)作りになるか」という発想から解説されており、本づくりの要点を読みとるための指南書として味読したいところだ。
内容は、「複数折丁の糸かがり・布表紙角背上製本」「連続模様の折本」「手帳」の本文制作と製本を軸にして、それぞれの段階でのポイントもきめ細かく指導している。 道具や材料について、基本的には従来の正統的なものを採用している。資料保存の観点から、糊は生麩糊と木工用ボンドを使用するが、昨今の個人愛好家は両面テープやスティックのりを利用するケースもあ るので、この点についてもできれば触れて欲しかった。
また、本文小口の化粧断ちはせず、最小限の切り揃えで済ませるという方法は、量産本ではなく手製本の考え方を汲んでいる。古書修復の場合は確かにこうするべきだが、本文紙から作る私家版制作では、作 り手のコンセプトによって、また、作る本によって判断しても良いように思う。
他書と違って新しい部分は、「クータ」(p. 116?)についてであろう。クータとは、本の開閉の際に本文と表紙の背との間にできる空洞を内側から補強するための筒状の物体である。これまでの製本指導書では、 クータの幅は本の背幅と同寸で作っていたが、本書では背幅より左右5mmずつ広いクータを使用している。いわゆる「広開本(こうかいぼん)」の発想と同様の改良点で、これによって、より開きの良い構造になっ た。
なお本書には索引が完備していて使い勝手が良く、糸かがり本なので丈夫である。手製本を自分で行わない人でも、「書物の、あるべき姿」を示唆する記述がふんだんに盛り込まれているので、本好きならぜひ 、じっくり読み込んで欲しい好著である。


yojohan 『Petit Book Recipe プチブックレシピ リトルプレスの作り方』
毎日コミュニケーションズ 2007年7月 A5判変形127頁 定価・本体1700円+税
本づくりについての入門書はこれまでにも色々と出版されているが、既存の本は製本技術の指導が主眼であった。本書は「どんなに楽しい本が作れるか」、その具体例を紹介するという、見て読んで楽しめるビ ジュアル本で、紙面はほぼ全部カラーである。
本づくりの流れは、内容を決めて、台割(本書では「サムネイル」と表示)を作り、組版レイアウト、プリント、綴じ、パッケージ仕上げ……と、つまり従来の製本にあたる「綴じ」の部分は、比重がとても小さい。という より、あまり難しい技術は必要ない形で仕上げている。
ここで紹介される本は、「スティックつき/スイーツのレシピブック」(アイスクリームの棒つき)、「1枚ずつ引き出して読む、ティッシュブック」、「手さげバッグ形/カバンの中身カタログ」、「ランチボックス入り/折 本型お弁当ダイアリー」、「紙コップ入り/コーヒー豆形の本」、「キャンディー形/巻物ダイアリー」等々、本というよりは冊子形カードに近いものばかり。いずれも、本文部分や外装ラベルなどは、パソコンのプリ ントで制作することがほぼ前提となっている。
たとえば「ランチボックス入り/折本型お弁当ダイアリー」は、お弁当箱をあけると、中身が折本状態で次々と出てくるもの。ランチボックスにきれいに納まるよう、本文紙の四隅を丸くカットしたり、ボックスの外側 には帯をつけるなどして、可愛らしい形に仕上げている。
糊付けに両面テープを使う点については、保存面で難点もあるが、個人が手軽に「本」(のようなもの)を作る、というコンセプトで編集した入門書は新しく、昨今の若い人たちのモノづくり熱に応える1冊といえる。 1点制作もののルリユール作品を作るというのではなく、どちらかというと、複数冊作ってネットやイベントで売るための作品制作である。本書の巻末には、販売価格をつけて売る方法や、ネット販売での注意点な どについても記されており、作るだけでなく「売る楽しみ」まで含めるところが、これまでの「製本入門書」とは大きく違うアプローチである。
製本を本格的に学びたいという層ではなく、雑貨感覚で作品を作って売る人たちは、書物に対する先入観がないぶん、本づくりの発想が破格であることが多い。こうした本の読者から、新しい書物作品が生み出 されることを期待したい。


樽見博『三度のメシより古本!』
平凡社 2007年5月 新書判201頁(平凡社新書)定価・本体700円+税
伝統ある古書情報雑誌『日本古書通信』の編集者として27年間、古書と向き合ってきた著者が、『古本通』に続いて書き下ろした「古本」本の第2弾。タイトルの軽さに反して、内容は前作よりも更に格調高い。
本書のテーマは大きく2つにわかれている。前半では浮世絵を皮切りに、明治文献、作家の肉筆原稿類、文芸書初版本の古書価が時代とともにどう変遷したかを追う。古書に限らず、物の値段にはよろず需要と 供給のバランスという要素が深く関わっている。昭和22年当時の古書目録によると、作家の原稿が安値であったのに比べて、文学全集類が高値をつけていたという。古書価格の変動について、明治の昔から、 その時代背景とともに明確に描かれているのはさすがである。
後半は、滝沢馬琴や大田南畝の仕事を後世の人たちがどう評価しているか、人それぞれのとらえ方の違いに着眼、そして劇作家真山青果の著述人生の変遷について、「本を書く」という視点から分析を行う。前 半が古書業界人の経験からの記述であったのに対して、後半は編集者としてのそれであると言えるだろう。
書名と価格が並んでいるだけの古書目録や、図書館へ行けば誰でも手に取ることができる全集類でも、その道のプロが見て読み解くと新たな事実が浮き彫りにされるのだ。昨今発行される本の中には、既存の 文献からの引用をつなぐだけで書き上げられている不埒なものが少なくないが、本書を読めば、「本や資料はこうして使うものだ」と、その通の技を見せつけられる思いがするはずである。           (以上 3点、田中栞)

49号(2007年6月1日発行)

Joseph W. Zaehnsdorf
The Art of Bookbinding:The Classic Victorian Handbook
Dover Publications 2007年3月刊 
英語 ペーパーバック 190頁 10.95ドル
19世紀末から20世紀初頭のイギリスで活動した著名な製本家の1人 Joseph William Zaehnsdorf(1853-1930)の古典的な製本マニュアルが、アメリカの Dover社からペーパーバックで復刊された。Zaehnsdorf 家は、ブダペスト出身の初代 Joseph Zaehnsdorf(1814-86)から3代にわたってロンドンで有数の製本所を営んでいた製本家一族である。Zaehnsdorf 製本所は伝統的な手製本の技術に裏打ちされた優れた仕事で広く知られていた(だが第2次大戦後に製本所の所有権は創業家の手を離れ、1980年代にはサンゴルスキ&サトクリフと合併、いずれも宝飾店アスプレイに買収され、1998年にシェパーズという製本工房に吸収された)。
2代目の J. W. Zaehnsdorf が「未熟な職人に製本のやり方をできるだけ平易に説明するために」執筆した本書は、特に製本職人を目指す見習いたちにとって信頼できる製本の教科書となり、たびたび版を重ねた。当時の製本の方法を知るうえで重要な資料でもある。初版は1880年にロンドンで刊行されたが、今回の Dover 版は1890年に出た第2版(改訂増補版)の復刊である。モノクロ図版約120点。
ちなみに About Bookbinding(www.aboutbookbinding.com)という英語のサイトでも本書の第3版のテキストが公開されている。


Anne C. Bromer, Julian I. Edison,
Miniature Books:4,000 Years of Tiny Treasures
Harry N. Abrams 2007年4月刊 
英語 ハードカバー 216頁 40ドル
西洋のミニチュア・ブック(天地3インチ[76ミリ]以下の本)の豊かな歴史と魅力を、ほぼ実物大のカラー写真260点以上とともに伝える魅力的な本が出た。彩飾写本、書物の芸術、宗教的な本、暦、子どもの本、世界最小の本、政治的な本、趣味の世界、珍本・オブジェ的な本という9つの章から成り、中世から現代まで、形もサイズもさまざまな、幅広いテーマにわたるミニチュア・ブックを網羅している。ジャンルごとに具体的なミニチュア・ブックの数々を写真入りでとりあげ、豊富なエピソードを交えつつ解説するというスタイルで、歴史的にも芸術的にも興味深い本が続々と登場する。ミニチュア・ブックは製本に贅を凝らす場合も多く、そうした豪華な装丁の写真も多数収録されている。登場する本の大半は欧米のミニチュア・ブックだが、日本の豆本に関する記述も少しある。著者は2人とも年季の入ったミニチュア・ブック愛好家。Bromer は稀覯本の販売に携わっており、Edison は有名なミニチュア・ブックのコレクター。
本書の刊行に合わせて、ニューヨークの the Grolier Club では、約450冊のミニチュア・ブックを一堂に集めた展覧会 Miniature Books: 4,000 Years of Tiny Treasures を2007年5月16日から7月28日まで開催中。なお、the Grolier Club と Bromer Booksellers では、本書のミニチュア版つき函入り豪華版(150ドル)も販売している。(売り切れとの情報もある)



The Bonefolder 2007年春号
http://www.philobiblon.com/bonefolder/vol3no2contents.htm
製本家とブック・アーティストのための電子ジャーナル The Bonefolder(英語)の最新号が The Book Arts Web のサイトで公開された(PDFファイル)。ブック・アーツを教えることをテーマにした文章や、シカゴ公共図書館で2006-2007年に開催された製本展 One Book, Many Interpretations の報告、ニューヨークの the Grolier Club で昨年開催されたギルド・オブ・ブックワーカーズ100周年記念展のレビュー、Betty Bright, No Longer Innocent: Book Art in America 1960-1980 の書評など。
  (以上3点、市川恵里)



『本の手帳』No.3 特集「魅惑の蔵書票〜小枝昭一蔵書票コレクション」
(田中栞責任編集号)本の手帳社(田中栞/電話045-431-1260・メールkoubaido@cam.hi-ho.ne.jp) 2007年6月刊 A5判【普及版】本文64頁+カラー表紙4頁 定価1000円+税(送料別途80円)【限定版】本文68頁+カラー表紙8頁、限定50部・限定番号入。オリジナル銅版手彩色蔵書票(大野加奈作)1点貼込、特製畳紙入り。 定価4000円+税(送料別途160円)

仙台在住の世界的な蔵書票コレクター・小枝昭一さんは、小枝さん本人が版画家に依頼して制作してもらった蔵書票が77点あり、それを世界各国の著名コレクターたちと交換することで蒐集した蔵書票約3000点を有する。コレクションの核を成すのは、細密にして雄大な海外のエッチング蔵書票や、ビロードのような質感のメゾチント蔵書票など、銅版で制作された華麗な作品群である。
これまで、小枝コレクションは噂のみ囁かれるだけでその全貌は明らかでなかった、いわば「幻の蔵書票コレクション」であった。それが今回、田中が小枝さんから図録作成についての全面協力を取り付け、そのコレクションすべての通覧を許された。本書では贅沢にも、更にその中から秀逸な蔵書票300点を厳選して画像をスキャンし、1年がかりで迫力の現代蔵書票図録として仕上げるに至ったのである。
小枝さん本人の蔵書票には、版画家が作品に添えたコメントもあり、版画家が制作にあたって抱いていたイメージやその折の状況を垣間見ることもできる。
なお、本図録の上梓を記念して小枝さんが銅版画家・大野加奈さんに蔵書票制作を依頼、念入りな手彩色の施されたこの蔵書票の実物を貼り込んだ限定版を発行することになった。限定版には、大野加奈さんの小枝票に寄せての随想や、国内外の人気版画家から小枝さんに送られた年賀状(版画製)の図版など、普及版にない記事も掲載されている。
                                 (田中栞)

48号(2007年4月1日発行)より


Thomas Kren, French Illuminated Manuscripts in the J. Paul Getty Museum
Getty Publications 2007年2月刊 英語
ペーパーバック 114頁 19.95ドル
ロサンジェルスのJ・ポール・ゲッティ美術館から、館蔵の彩飾写本を紹介する一般読者向けのシリーズが刊行されている。第一弾は Italian Illuminated Manuscripts in the J. Paul Getty Museum(2005)で、今回、第二弾として出た本書は、中世ヨーロッパにおける彩飾写本制作の中心地であったフランスの彩飾写本を紹介するカタログである。
 ゲッティ美術館所蔵のフランス彩飾写本は、ドイツのコレクター、ペーターとイレーネのルートヴィヒ夫妻の旧蔵品を中心に50点余りにのぼる。本書には9世紀から18世紀に至るそれらの彩飾写本のページがカラーで収録され、ブシコーの画家、ジャン・フーケ、ジャン・ブルディションら有名な画家の見事な挿絵も含まれる。ゲッティ美術館写本部門キュレーターのトマス・レンが、主な作品をとりあげつつ、フランスの彩飾写本の流れを概説したイントロダクションが巻頭に20ページほどあり、残りはすべて図版のページである。110余点の美しいカラー図版だけでも一見の価値はあるが、冒頭の解説でとりあげていない写本については、ごく簡単なキャプション以外に何の説明もないのは物足りない。
  (市川恵里)


『本の手帳』No.2 特集「編集者たちのマイブーム」
本の手帳社(田中栞/TEL 045-431-1260・メールkoubaido@cam.hi-ho.ne.jp) 
2007年2月刊 A5判64頁 定価1000円+税(送料別途80円)
大貫伸樹氏が編集長になって、全ページを特集「編集者たちのマイブーム」として1年がかりで制作した1冊である。
 内容は、「内野健児と亜細亜詩脈」(坂口博)、「プラトン社の雑誌…『女性』『苦楽』をめぐって」(中村恵一)、「戦時中の櫻井書店本」(大貫伸樹)、「川端康成本の装丁」(田坂憲二)、「横光利一『時計』再版奥付の謎」(田中栞)、「本を切る話…岩田書院の舞台裏から」(岩田博・田中栞)、「『言海』は何種類あるのか」(境田稔信)、「装幀本蒐集の醍醐味…渡辺一雄装幀『まぼろし雑記』、佐野繁次郎装幀本」(西村義孝)、「編集者から見た索引編集」(飛鳥勝幸)の9本。
 本好きの出版業界人たちが、それぞれに興味を引かれた本を蒐集し、調査に没頭する。本業の傍ら、こうした作業に熱中する姿に、書物の世界の奥深さを垣間見ることができるだろう。
 本冊は編集長自らが、自作オブジェで表紙を飾り、組版レイアウトまですべて行った。記事中には美しい本の図版を多数収録し、見ても楽しい誌面となっている。  
   (田中栞)


47号より
Michelle P. Brown
The World of the Luttrell Psalter

The British Library 2006年10月刊 英語
ペーパーバック 96頁 9.95ポンド
 大英図書館の至宝のひとつ『ラットレル詩篇』は、14世紀前半、イングランドで制作された有名な彩飾写本である。騎士にして裕福な荘園領主でもあるサー・ジョフリー・ラットレルが依頼して作らせた「詩篇」の写本で、欄外に、種まきや収穫といった農作業の様子や、ラットレル一家の食事風景など、中世の人々の日常生活が実に細かく具体的に描かれていることでよく知られている。
中世写本の専門家ミシェル・P・ブラウンによる本書は、『ラットレル詩篇』を14世紀イングランドの政治・社会・文化状況の中に位置づけ、依頼主サー・ジョフリーの生涯とラットレル家の歴史をたどることで、この写本の特徴や制作過程、図像にこめられた多層的な意味を解き明かそうとするものだ。内容はやや専門的だが、90点におよぶ美しいカラー図版で『ラットレル詩篇』の奔放かつ奇怪な挿絵の魅力を味わうことができる。
 なお、同じミシェル・P・ブラウンの解説つきの『ラットレル詩篇ファクシミリ版(The Luttrell Psalter Facsimile)』も昨年刊行されている。サイズは36×24.5cm で厚さ7cm 以上、重さも5kg を超えるという。ちなみに値段は295ポンドである。
 大英図書館のサイト内にある「ターニング・ザ・ページ(Turning the Pages)」というページでも『ラットレル詩篇』の一部の画像が見られる。


The Bonefolder 2006年秋号
http://www.philobiblon.com/bonefolder/vol3no1contents.htm
 製本家とブック・アーティストのための電子雑誌 The Bonefolder(英語)の2006年秋の号が昨年末、Book Arts Webのサイトで公開された(PDFファイル)。収録された記事の概要は以下のとおり。
 Kristin Baumの“The Story in the Cards”は、廃棄されることになった大学図書館のカード目録を保存して、一般市民を含めた多くの人々にそのカードを使った作品を制作してもらい、展覧会を開催するというプロジェクト cARTalogの報告。書籍修復家 Gary Frost の“Aesthetics of Book Conservation”は古書修復の美学について考察した文章。Daniel D. Stuhlmanの“The Preservation of Torah Scrolls”は、シナゴーグで使用されるトーラー(伝統的に羊皮紙に筆写され、巻物の形をとる)の保存の問題をとりあげる。
 Velma Bolyardの“Papermaking at Wake Robin”は、長年、自宅の手漉き紙工房でさまざまな植物を素材に紙を漉いてきた経験を綴ったもの。Linda Douglasの“Noosa Books.05―Works of Imagination”は、オーストラリア、クィーンズランドのヌーサ・リージョナル・ギャラリーで2005年に開かれたブック・アートの展覧会と、アーティスト・ブックに関する会議の内容を報告している。William Minterの“Recessing a Cover Label”は、表紙のタイトル・ラベルを貼りこむ部分にくぼみをつける簡単な方法(作った表紙がまだ濡れているうちにPETGというプラスチックの板を置き、プレスに挟んで圧力をかける)を説明した文章。
 最後の“The Flagbook Bind-O-Rama”は、フラッグブックと呼ばれる製本形式のさまざまな作品を集め、紹介した記事。フラッグブックというのは、ブック・アーティストの Hedi Kyle が20数年前に考案した形式だという。折り本状に折りたたんだ背の折り山に多数の紙片(フラッグ)を貼りつけるという単純な作りで、立体的かつ複雑なイメージを展開することができる。興味のある方は画像を見ていただきたい。
                               (市川恵里)

安春根『図説韓国の古書 本の歴史』
日本エディタースクール出版部 2006年11月刊 A5判上製134頁 定価・本体2600円+税
 書物の歴史について解説した本は数多くあり、その中の一部で朝鮮本について言及するものはあったが、韓国の書物をメインテーマとした1冊本は、日本では意外となかった。黒田亮『朝鮮旧書考』(岩波書店、1940年初版)は仏教書など特定の書物を対象とした論文集だったし、林泰三『古活字本と文庫』(韓国書籍センター社、1989年1月)は古活字本が中心であった。どちらも、あまり読みやすくはない学術書である上に、現在では古書で探すしかない。
本書は、韓国の編集者・出版史研究家で、韓国出版学会を創立した初代会長でもある著者が、韓国の比較的古い書物について、カラー写真を多数載せながら概説した入門書である。1991年1月に韓国で出版されたものが、このたび邦訳され出版に至った。
 この書名で初心者向けということで、期待を抱いて購入したが、読んでみると不満が残った。
 ここで取り上げる「古書」とは「1959年以前の本」を指すそうだが、なぜ「1959年」以前なのかについては、「韓国特有の様々な事情を考慮に入れた規定」とあるだけで具体性がなく、韓国人にはわかるのかもしれないが、現代の日本人には理解できない。
 また、様々な書影が掲載されているが、掲載本に刊年や制作年代がほとんど記されておらず、いつ頃の本なのかがわからない。「古典籍」というほど古くはなくとも、何年頃の本なのかくらいは記載するべきであろう。
 図版掲載のしかたも、製本形態や印刷方式で紹介したかと思えば内容で記したりと脈絡がない。特徴のある本の図版だけを載せているのはわかるが、入門書として読む読者は整理がつかず、混乱するだろう。製本形態なら製本形態で、掲げている項目の関連図版を1か所にまとめて、製本形態の全体が概観できるよう配慮して欲しかった。
 本書には掲載書の大きさの記載もないのでわかりにくいが、線装本で綴じ目が5つであることが多いのは、比較的大振りの本が多いことも要因の一つである。せっかく和訳出版するなら、日本や中国の古典籍との類似点や相違点についても補足説明を入れて欲しいところだ。
 こうした不満な部分はあるものの、見ていくと東洋文化圏の書物であっても日本や中国のそれとは違う特徴のあることは感じ取れる。分類として特異なのは本書の最後に載せられた「族譜」で、内容は一族の名簿的なものだが、書物として極めて重要視されているようだ。また、韓国の版元の種類が記された、出版についての記述は比較的詳しい。
 図版には、書物そのもの以外に、木活字や版木、銅活字や銅製版などもあり、(他書を参考にしなくてはならないものの)日本の木活字や版木との相違を調べる材料にできる。この点、イラストにしてしまわず実物の写真をカラーで載せてくれたことは有難かった。

沢田真理『手づくり絵本』光文社(知恵の森文庫)
2003年10月 文庫判193頁 定価・本体705円+税
 数年前に出た本で、既に版元品切れになっているようだが、たまたま最近、古本で入手したので紹介しておく。
 絵本作家として活躍している著者が、自分で書いた内容で絵本を手づくりするという、その実践の手順を紹介した本で、「知恵の森文庫」のための書き下ろしである。本書で作っているのは、旅行記『おまかせイタリア9日間』と、料理レシピ本『マリケルの鶏肉のトマト煮込み』の2作品。
 絵や写真をふんだんに盛り込み、カラフルな中身にしている。作る工程は見ても読んでも楽しいが、作り方に心配な点が2つある。
 まず第一は、接着剤にペーパーセメントとスティック糊を使用していることだ。スティック糊は、原稿の版下を作成する際、写真などを貼りつけるのに使っている。原則として本に仕立てる本文用紙はカラーコピーしたものなので、スティック糊そのものを製本に使用するわけではないが、しばらく経って再び本を作ろうと思い立った時、貼りつけたものがみな剥がれているおそれがある。
 本書の製本方法は、糸は使わずに全ページ糊付けする方法をとっている(片面印刷した本文用紙の、裏白面を全面糊付け)。ここで何よりも気がかりなのは、本文用紙も表紙も、接着は全面的にペーパーセメントを使っていることだ。
この接着剤を使ったことのある人ならご存知のように、接着部分は数か月でその接着力を失い、用いたペーパーセメント材が黄土色に変色して残る。多大な手間と思いを注いで作った本を、しばらく経った後で開けてみたら、全ページ剥がれて黄土色のしみだらけという、無惨な状態になっていることが想像できる。
 後半、「ちょっとひとこと」欄に「布や革で表紙を貼る場合は、ペーパーセメントではなく、専用のボンドで」とあり、著者本人は木工用ボンドを使った経験もあるようだ。しわにならなくて扱いやすいという理由からペーパーセメントを推奨しているのだろうが、愛用していながら後々の様子を知らないというのは理解に苦しむところだ。
 気がかりの2点目は、紙の目についてほとんど頓着していないこと。本書で実際に本文用紙とするのは、A4判を二つ折りにするカラーコピー紙である。コピー用紙は通常長辺に平行に目が走っているので、二つ折りでは逆目になる。A3判でコピーして半裁するとよいが、そうした注意書きはない。中ほどの「ちょっとひとこと」欄に、「紙の目」について触れている一文があるものの、肝腎の本づくりには生かしていない。
 本文紙の周囲にボカシを入れたり、旅先で使ったコインやチケット、ツアー冊子など、思い出の品の図版をたくさん盛り込むなど、様々な工夫が楽しいだけに、心配な要素の残る本である。


『岩佐なを銅版画蔵書票集』
美術出版社 2006年12月刊 A5判変形202頁 定価・本体3000円+税
 著者は詩人として知られ、詩集『霊岸』(思潮社)で1995年に第45回H氏賞を受賞している。そして同時に、早稲田大学図書館に勤める司書でもある。しかし、蔵書票愛好家なら、彼の名は銅版画家として記憶している存在であろう。 
 本書には、1981年から2005年までに岩佐さんが制作した蔵書票作品のうち、自選の93点(すべて水彩絵の具で手彩色)が原寸大のオールカラーで掲載されている。
 描かれるモチーフは少女や動物、昆虫や花など愛らしいものが多い。魑魅魍魎が登場する図柄もあるが、エッチング作品でありながら不気味な雰囲気はあまりなく、どことなくユーモラスでほのぼのとした画風である。
 昨今では、海外の版画家が作る蔵書票などは大変大判化して、およそ本に貼れない作品が流行しているが、ここに収録されている作品はおおむね小振りで、通常の書物に貼り込める常識的な大きさだ。繊細で、掌に載るサイズで丁寧に作られた彼の蔵書票は、「紙の宝石」と呼ぶに相応しい。
 著者による詩「版画に似て」と随想「蔵書票雑感――創る側から」、神奈川県立近代美術館専門学芸員の橋秀文による「蔵書に夢を紡ぎこむ――岩佐なをのエクス・リブリス」を収録している。
                (以上3点、田中栞)

46号より
Krystyna Wasserman, The Book as Art:
Artists' Books from the National Museum of Women in the Arts

Princeton Architectural Press 2006年9月刊 英語
ハードカバー 192頁 55ドル(米)
2006年10月27日から2007年2月4日まで、米国ワシントンにある女性芸術美術館(NMWA)の開館20周年記念展として The Book as Art と題するアーティスト・ブックの展覧会が開催中だが、本書はこの展覧会に合わせて出版されたオールカラーの図録である。同館のブック・アート・コレクション800点以上の中から、1970年代から現在に至る作品108点を選び、作家自身によるコメントつきで紹介している。出品作家86名は全員女性で、出身国はアメリカのほか、ヨーロッパ諸国、ロシア、オーストラリア、アルゼンチン、メキシコ、ヨルダン、レバノンなど12か国におよぶ。
写真や挿絵を主体とする限定本から、折り本、ポップアップ、ブック・オブジェに至るまで、実にさまざまな形態の、創意工夫に富んだアーティスト・ブックが並び、空のティーバッグに日記を書き、箱に詰めた作品や、アンネの日記の断片を書きこんだ白い子供用ドレスなど、はたして「本」と呼んでいいのかどうか考えさせられる作品も少なくない。テーマもレベルも材料も千差万別だが、個人的な経験にもとづくパーソナルな作品が比較的目立つ。
女性芸術美術館のために20年間アーティスト・ブックを収集してきた同館ブック・アート担当キュレーター、クリスティーナ・ワッサーマンによる解説のほか、アーティスト・ブックに関する著作もある研究者ジョハナ・ドラッカー、作家でブック・アーティストのオードリー・ニッフェネガー(『タイムトラベラーズ・ワイフ』の作者)による小論も収録。現代美術の魅力的な一形式としてしばらく前から注目されているアーティスト・ブックの多様性と広がりがうかがえる図録となっている。
National Museum of Women in the Arts
http://www.nmwa.org/     (市川恵里)


いせひでこ『ルリユールおじさん』理論社
2006年9月刊 A4変形横判56頁 定価・本体1600円+税
大変美しい絵本である。舞台はパリの路地裏。「木」が大好きな女の子の、愛読していた図鑑が壊れてしまった。それを「ルリユールおじさん」の所へ持っていって治してもらうというストーリーだ。
「ルリユール」という言葉は一般人にはなじみがないが、この言葉を用いながら、仕事をわかりやすく丁寧に描写してある。
翻訳本かと思われるほど絵が的確なのは、著者がパリで出会った製本職人に実際に取材しているからで、製本工程の詳細なスケッチが多数入っている。仕事をする「ルリユールおじさん」の手の表情がとてもいい。手仕事に魅せられた著者の気持ちがよく伝わってくる。
製本に関する用語の表記について、いくつか違和感のある箇所があり、ここに記しておく(岡本幸治氏のご教示による)。
「ルリユール」を、本を仕立てる仕事(製本術)を意味する語として使用するだけでなく、製本職人を指す語としても使用している。正確には仕事を意味する語はreliureで、人を示す語はrelieur(ともに名詞)。カタカナ表記ではほとんど区別することができないので、職人を示すケースでは「ルリユールおじさん」または「ルリユール職人」などと、人物を表す言葉を用いるのが望ましい。
支持体を「糸」としているが、おそらく帯麻であろう。「ひも」のほうが適切。表紙素材として挙げられている「羊皮」は、なめしてあるはずなので「羊革」とするべき。
革漉き作業で使用する道具は「へら」ではなく「ナイフ」。絵にはきちんと革漉き包丁(刃物)が描かれている。
こうした細部で気になる部分はあるものの、全体としては非常に魅力溢れる1冊になっている。表紙に「RELIEUR ET ROBINIER」(製本職人とアカシア)とあり、「ルリユール」と、女の子が大好きなページの木「アカシア」の語の末尾が、あたかも韻を踏むようなタイトルにしてあるのも心憎い。


『西鶴と浮世草子研究』vol.1
笠間書院 2006年6月 A5判252頁 定価・本体2500円+税
年1冊刊の予定で刊行が始まった、雑誌形式シリーズの1冊目。特集は「メディア」で、出版に焦点を当てた内容である。早稲田大学教授・中嶋隆と青山学院大学教授・篠原進の2名の近世文学者が編集を行っている。
林望ロングインタビューでは、浮世草子を書誌学的に調査してきた様子が細かく語られ、古典籍を扱う際、どこに注目するべきかがよくわかる。幻冬舎社長・見城徹ロングインタビューは、その編集者としての姿勢、出版のやり方について赤裸々に吐露、営利出版と縁のない研究者や、学術書の出版人にとっては厳しいコメントが続発する。
ほかに、冨士昭雄「貞享期の出版攷」、市古夏生「『増益書籍目録大全』と西鶴本」、羽生紀子「貞享三年の池田屋岡田三郎右衛門」、谷脇理史「西鶴の自主規制とカムフラージュ」、速水香織「貞享・元禄期における三都の出版書肆」など、江戸時代の出版に関する文章が多数掲載されている。更に西鶴研究書の紹介や研究史、韓国での西鶴研究状況についての情報も。別冊付録として「西鶴と浮世草子・最新文献ガイドブック(平成15〜17年版)」がつく。
本書の目玉は付録の「西鶴浮世草子・全挿絵画像CD」で、『好色一代男』『好色一代女』『諸艶大鑑』『男色大鑑』『日本永代蔵』『世間胸算用』など西鶴本25点の作品の挿絵をすべてパソコンで見ることができる。
いきなり学術研究書を買うのは難しくても、これなら、江戸期に出版された書物の雰囲気を感じ取る入門書として、気軽に買って手元に置いておきたくなる。


田坂憲二『大学図書館の挑戦』
和泉書院 2006年11月 四六判225頁定価・本体2500円+税
著者は福岡女子大学教授で、『源氏物語』など平安文学の研究者として知られる。一方で現代文学全集の書誌学的研究をするなど、ユニークな姿勢で書物と接している。
そんな著者が、大学図書館長を兼任することになった。無類の愛書家である視点から、企画展示では、ラインナップを練ることに始まり、展示作品を選び、解説文を執筆する。署名入本、細川書店本、町春草装丁本といった、書物そのもので見せる展示から、小津安二郎、舟橋聖一、川端文学などの人物や、文学全集に見る出版文化史などの切り口で興味を引く内容まで様々だ。こうしたテーマ設定は、本好きならではの手腕であろう。
もう一つ特徴的なのは、書物とは書かれているテクストだけでなく、ブックデザインそのものも大切な情報であると見なして、函やジャケットも含めてそっくりそのまま保存するのが望ましいとするコンセプトである。たとえ実物を手にすれば一目瞭然の違いでも、昨今のOPAC(所蔵本検索システム)に登録されている書誌データ情報では、外装の相違点(異装本)や改編版の違いまでは検索できないからだ。
書庫スペースの制約もあり簡単にはいかなくとも、このような着眼を広めていく活動そのものに、まず意義があるだろう。図書館関係者に参考にして欲しい内容である。
なお、本書の第4章ではインターネット上の所蔵本検索システムについて取り上げられている。実際の書誌データの誤謬を分析することで、システムの不備を推理する痛快な一編であり、緻密な研究論文である。ただ、この分野については日々改善されており、正確な書誌情報群(データベース)とシステムを構築することが目的であるなら、ネットにまつわる提言はネットに載せるのが得策であろう。新聞や雑誌よりも更に内容更新の困難な「単行本」というメディアに収録することには、いささか疑問を感じた。


羽鳥房江『ゴムはんこワールド』
技術評論社 2006年12月刊 A5判79頁定価・本体1380円+税
消しゴムやゴム板でスタンプを作り、それで様々な紙雑貨を手作りする。昔から行われていたことだが、昨今は版材やスタンプインク、用紙などが格段に進歩し、作品制作の幅が広がった。
著者は、小さな手づくりゴム版を依頼に応じて制作、「くり工房」の名でインターネット販売している。その人気のクラフト作品をカラーで紹介、定番の年賀状を始めとして、四季折々のメッセージカード、手紙用品として一筆箋や封筒、切手風シールに封緘シール、ポチ袋や箱、タグなど、小さな雑貨がたくさん並んでいる。
「本の虫」と題する章では、ゴムはんで作った蔵書票、ブックカバー、しおり、簡単な豆本が取り上げられ、カラフルでかわいらしい作品が紹介されている。こうしたグッズも自分で手作りできるとなると、本の楽しみが倍加するに違いない。 
本書の見返しもスタンプの連続模様で作られており、手軽にオリジナルの紙素材を作れるヒントが盛り込まれている。材料紹介のページに書かれているが、布に捺せるスタンプインクもあるので、これで表紙布を作ることも可能だ。はんこの型紙とクラフトの作り方つき。 (敬称略。以上4点、田中栞)



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