皮革講演会「革のできるまでと各種革の特性」
日時…平成26年9月4日18時30分~21時
場所…京橋区民館1号室
参加人数…29名(非会員も含む)
講師…宝山大喜氏(元東京都立皮革技術センター所長・専門技術指導員)
資料…DVD『皮革のできるまで〜皮から革へ なめしのメカニズム〜』
その他…講演者宝山氏への質問用紙とアンケートを配付
〈講演内容〉
【皮から革への工程】
DVD『皮革のできるまで〜皮から革へ なめしのメカニズム〜』を上映し製造工程を解説していただきながら原皮から革になるまでを学びました。
1. 鞣しの準備作業
・原皮(原皮の多くは塩蔵輸入されている)
・水洗い(塩抜き)
・裏打ち(肉などの除去)
・石灰・毛抜き(硫化素材などを使用)
・分割(厚みを整え銀面と床革をとる)
・脱灰・酵解(石灰の除去、残っているたんぱく質を酵素で分解)
2. 鞣す
・クロム鞣し(多様性、耐熱性に優れていて靴などに使われる)/タンニン鞣し(底皮、ヌメ皮、ソフトヌメなど。工具のケース、ベルト)/混合鞣し(クロムの後にタンニンで再鞣しをする、和草履の底などに使用)などの方法で鞣す
・厚みを整える(裏削り・裏すき)
・再鞣し(クロムのあとに削ってからほかの鞣しをする)
・染色、加脂(下地染はドラムで染める。酸性染料を使う)
・水しぼり
・乾燥
・ステーキング(叩いて柔らかくする)
・張り乾燥
・仕上げ(磨く、加脂する)
3. 革の種類
・銀面(ヌバック、スエード、ベロア)・・・銀付
・床(床ベロア)…銀なし
4. 鞣しの準備作業
・原皮(原皮の多くは塩蔵輸入されている)
・水洗い(塩抜き)
・裏打ち(肉などの除去)
・石灰・毛抜き(硫化素材などを使用)
・分割(厚みを整え銀面と床革をとる)
・脱灰・酵解(石灰の除去、残っているたんぱく質を酵素で分解)
5. 鞣す
・クロム鞣し(多様性、耐熱性に優れていて靴などに使われる)/タンニン鞣し(底皮、ヌメ皮、ソフトヌメなど。工具のケース、ベルト)/混合鞣し(クロムの後にタンニンで再鞣しをする、和草履の底などに使用)などの方法で鞣す
・厚みを整える(裏削り・裏すき)
・再鞣し(クロムのあとに削ってからほかの鞣しをする)
・染色、加脂(下地染はドラムで染める。酸性染料を使う)
・水しぼり
・乾燥
・ステーキング(叩いて柔らかくする)
・張り乾燥
・仕上げ(磨く、加脂する)
6. 革の種類
・銀面(ヌバック、スエード、ベロア)・・・銀付
・床(床ベロア)…銀なし
【革の特性等について】
以下の項目について詳しく講義していただきました
◎皮革の種類と特性:皮は生(毛皮は毛があるので皮)、革は鞣された状態のものをさす。
◎革の組織的特性:銀面と床に分けられる。
◎コラーゲン分子から繊維束:コラーゲン分子が成長してコラーゲン繊維束に成長していき太くなって皮になっていく。これが天然皮革の特徴。きめの細かい繊維束になるほど強度は弱くなる。繊維束があるため通気性湿放性がよい。
◎皮革の断面図:表皮、乳頭層、網状層に分かれる。レザーとして必要なのは脂肪などを除いた真皮までである。
◎カーフスキンの繊維方向:背を中心に繊維が流れるので背に対象に取る。繊維に平行に引くと強い。
◎靴用に適した部位:繊維が密の革は型崩れがしにくく靴用に適している。
◎革の部位の呼び名と原皮の傷:放牧牛には焼印や虫食い、糞尿やけの傷がある。
◎革の構造特性:成牛、豚:毛穴が貫通している、馬:全体に薄い・コードバン、羊:柔らかい羊毛タイプは弱い、山羊:羊に比べ固く銀面も凹凸がある、カンガルー:強度がある、など。
◎人工皮革:コンポジット、合成皮革、人工皮革、ビニールレザー
◎天然皮革と合成皮革との燃焼試験(燃焼カス):天然は燃えにくく植物鞣しのカスは白っぽい、クロムは緑色のカスがのこる。合皮は燃えやすい。
◎革の一般化学組成:クロムは耐熱性と染色性。タンニンは形の保持性に優れている。
◎種々の革の化学分析値
◎革の外観的性質:色調、銀面模様、しわしぼ、銀浮き、焼印などの傷をみる。
◎感触(風合い)的特性:柔軟性、腰弾力性、ふくらみ、ぬめりなどを評価する。
◎各種鞣し革の熱収縮温度の比較
◎革中の水分量と熱変性温度
◎革の耐熱性:乾いているときは強いが濡れていると弱い。濡れているときには熱を加えてはいけない。タンニンの方が縮む。
◎天然皮革と合成皮革の吸放湿性の比較:天然は吸湿性があるので靴の中底などに使用される。
◎革の透湿度試験(JIS法):表面の加工によっては透湿性が落ちる。
◎家具用からの溶出イオンと金属(パイプ)のサビの関係:塩素系をさける。
◎乾燥剤によるダメージ(塩化カルシウムタイプ):塩化カルシウムタイプはたんぱく質を溶かすのでシリカゲル系を使う。
◎鉄イオンとタンニン革の反応:万年筆などのインク(濃紺)は避ける。
◎長期保存による性状の変化:0〜5年までに劣化(伸び、引き裂き)が顕著になる。
◎長期保存による機械的性質の変化
◎長期保存による革中の脂肪分の変化:繊維に結合している脂肪は経年で酸化して劣化していく。
◎靴裏革の汗による性状変化:クロムは汗(酸性)に弱くはがれていく。
◎皮革特性の要因:タンパク素材で三次元構造である、部位により繊維の密度が異なる、種々な鞣し・再鞣しが施されている、低温で染色・加脂している、塗装前に色々な加工がされている、いろいろな塗装仕上げをしている。 などが皮革特性の要因といえる。
【質問と回答】
参加者からの質問と講師・宝山大喜様の回答
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① レッドロッドについて。
・古い皮革にあらわれる赤い粉を防ぐ方法はあるのでしょうか?
・古い皮革にあらわれた後の対策はあるのでしょうか?(複数の質問あり)
・糊のようなもの(セルロース)でコートすうくらいしかないのでしょうか?
→ 繊維が完全に粉体にまで劣化しているので、繊維束の交絡による強度は回復できません。強度を持たせるには樹脂加工をいかにうまく応用するかだと思います。
樹脂加工については(株)Conservation for Identityのサイトなどを参考にしてください。
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②革の加工(染色、型押し、薄くすく等)をすればするほど革の強度(まさつ等ではなく)(保湿、保油)が落ちると思いますが、逆につよくする加工方法はありますか?例えば、艶加工と同時に丈夫になるとか。
→ 強度的には樹脂系の柔軟剤を含浸させる、保湿/ぬめり感は保革油の利用である程度改良できます。使用前に目立たないところでテストしてから使用すること。
・樹脂系の柔軟剤 → 実際に考えられる革にテストした経験がないので具体的には指摘できません。一般的な皮革の仕上げに使われる樹脂で乾燥した後でも柔らかな性質の架橋を形成するものであれば良いのでは。繊維間に沈着して効果が得られると思います。
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③箔押しや空押し(活字刻印等)については、フルタンニンの方が良いのでしょうか?
→ タンニン鞣、あるいは再鞣でタンニンを多く使用(コンビネーション鞣し)したものでないと型が消えてしまいますし、熱をかけた時の焼印風の茶色の変色は起こりません。
「繊維間を埋めている過剰なタンニン」(参考資料を参照)は一因だと思います。繊維間の充填物が繊維間を固定するために可塑性が発揮されます。クロム革等では繊維間の空隙を埋めるものが少ないので柔らかさ、膨らみに優れ、可塑性が小さくなります。
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④家具等の革の選び方は?<クロム タンニン 銘柄など
→ 家具でも使用場所、目的によって異なると思います。キッチンチェアーなどではクロム鞣しで厚化粧した汚れに強い革。ソファーでは手触り、防汚、耐水性、耐光性の優れた革(カーシートに似た性質の革)が適していると思います。ほとんどがクロムをベースとしたソフト革にウレタン塗装をした革が使われます。特殊なデザインで伸びないしっかりした革が望まれる場合は、タンニン革(ヌメ革、サドルレザー等)が適しています。
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⑤金具は真鍮を好んでいますが、サビ、劣化の少ない金具の選び方などもあれば。
→ 革は塩素イオンの少ないもの選択する。メッキの場合は良質なメッキ金具を使用すること。
・塩素イオンの少ないもの → 外観からでは判別が不可能です。ジャングルテストで実際の相性を見るか、化学分析によりイオンの種類や量、pH等から判断できるこがあります。 最近の革つくりでは塩素イオンを含む薬品等はできるだけ使用を避けています(ダイオキシン 発生の一因)。漂白処理は、特殊な場合に次亜塩素酸ソーダを使うことがあります。処理後にチオ硫酸ソーダなどで処理し完全に遊離のイオンを無くしますが、処理の仕方で残存する可能性はあります。
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⑥革の保存方法を教えてください。(家庭で長期保存)(特に、山羊・カーフ) 革の巻き方、他
→ 製品革の保存は、革の間に薄葉紙(和紙に近い紙)を挟み、移染を防ぎながら、湿気の少ない冷暗所に保管。塗装面を外に銀面を内にして薄葉紙を挟んでまく。あまり強く巻かない。たまに乾燥した日に、梱包を解き、点検する(虫干し的な感覚)。そうすることによりカビなどの早期発見ができます。乾燥剤には塩化カルシウム系は使用しない。シリカゲル系を選ぶこと。
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⑦タンニンなめし山羊革で革の中に結晶した塩のようなジャリジャリしたものが出てきたことが、数回あります。例:国内購入の革、3例。イギリス購入の革1例
原因、対処法(あれば)知りたいです。
→ 鞣製中の水洗不足で、革中に塩類が蓄積されて結晶化することがあります。雨の日、靴がずぶぬれになり、その後乾燥した時に白い粉をふくことがあります。これをソルトスピューと言いますが、この現象が足の汗の塩分でなく、革つくりの段階で残った塩類の結晶だと思います。
【参加者の感想】
・製造工程をわかりやすく話してくださったので勉強になりました。
・革の構造や特性の科学的な解説がよかった。
・盛りだくさんの内容だったので複数回の講義にしてほしかった。
・パワーポイントの配付資料も参考になった。
等々たくさんのご感想をいただきました。ご協力ありがとうございました。
以上
平成26年9月16日
安田由加利
参考資料(Betty M. Hines “Deterioration in leather bookbinding – our present state of knowledge.” The British Library Journal vol.3 No.1 Spring 1977)
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